大手地銀は一枚岩じゃない
前回の記事では、大手地銀から金利1.6%・9割融資・30年で2.7億円を引いた話をした。そのときに、信金→地銀→大手地銀の階段を一段ずつ登るのが現実的だと書いた。
今日はその続きで、もう一段だけ具体的な話をする。ひと口に「大手地銀」と言っても、実は銀行ごとに、驚くほど性格が違うのだ。
私は現在、関東の大手地銀3社と取引をしている。この記事では、それぞれをC銀行・Y銀行・K銀行と呼ぶ。銀行名は伏せるが、不動産投資をやっている方なら想像はつくかもしれない。
銀行選びは、相性ゲーム
「大手地銀に持ち込めば借りられるだろう」と思って動くと、かなり遠回りになる。大事なのは、物件の特性と、自分の属性と、銀行の性格。この3つをマッチさせること。では、具体的に3社の違いを見ていく。
C銀行:積算不問・収益還元重視・9割融資
まずC銀行。私が今メインで使っている銀行で、今回の物件でも9割融資・金利1.6%・期間30年を引けた銀行だ。
積算評価を重視しない
C銀行の特徴を一言で言うと、積算評価を重視しないこと。
不動産投資の世界で「積算評価」というのは、土地の路線価と建物の再調達価格から計算する、銀行独自の担保評価。これが物件価格を上回っていないと融資が出ない、という銀行は多い。
でもC銀行は違う。C銀行が見るのは、物件の収益がどれくらい出るか。家賃収入から返済や経費を引いて、ちゃんと毎月プラスで回るか。この収益還元ベースで判断する。
積算が物件価格の50%しか出ていなくても、収益で回るなら9割融資してくれる。これが、都内の新築アパートに決定的に相性がいい。
都内の新築アパートは、利回りは高くないが、立地と将来性が良い。このタイプの物件は積算が出にくく、積算重視の銀行ではまず融資が伸びない。C銀行のような収益還元ベースの銀行でなければ、この領域は戦えないのだ。
無条件ではない。属性が前提
ただし、C銀行も無条件で9割出すわけではない。借り手の属性がしっかりしていることが前提。年収・金融資産・既存借入の健全性。こういうものが一定水準を超えていないと、そもそも話を聞いてもらえない。
私の場合、10年かけて属性を育てて、他行での返済実績を積み上げてきた。だからこそC銀行が「この人なら9割出せる」と判断してくれた。
Y銀行:金利は一段低い、でも積算重視で7割止まり
次にY銀行。Y銀行の特徴は、金利が一段低いこと。C銀行やK銀行よりも、0.2〜0.3%程度、金利が安く出る傾向がある。
これだけ聞くと「じゃあY銀行が最強じゃないか」と思うかもしれない。でも、そう単純な話ではない。
積算が出ない物件では、融資額が伸びない
Y銀行は積算評価を重視する銀行だ。物件の担保価値を細かく見て、積算が出ていないと融資額が伸びない。
今回の物件で、実際にY銀行にも打診してみた。同じ3億円の物件だ。出てきた条件は、融資額がだいたい7割まで。C銀行の9割と比べて、2割近く融資額が減る。これは、自己資金を2割多く入れなければいけないということだ。
| 銀行 | 融資額 | 自己資金 | 金利差(概算) |
|---|---|---|---|
| C銀行 | 2.7億円(9割) | 3,000万円 | 基準 |
| Y銀行 | 2.1億円(7割) | 9,000万円 | -0.2〜-0.3% |
| 差分 | -6,000万円 | +6,000万円 | - |
Y銀行が活きる場面
ただ、これはY銀行が悪いという話ではない。Y銀行は、積算が出る物件、例えば土地が広めの中古物件や郊外の物件では、金利の低さが活きる。物件の特性と銀行の性格が合えば、Y銀行が最強になるケースもある。
K銀行:期間25年・不動産融資は消極的
最後にK銀行。K銀行の金利はC銀行と同じくらい。ここはあまり差がない。
期間25年の影響
ただし、K銀行には大きな特徴がある。融資期間が最大25年なのだ。C銀行やY銀行が30年までOKなのに対し、K銀行は5年短い。
期間が5年短いということは、月々の返済額が増え、キャッシュフローに直撃する。
| 期間 | 月々返済 | 年間返済 | 差 |
|---|---|---|---|
| 30年(C銀行・Y銀行) | 約94万円 | 約1,128万円 | 基準 |
| 25年(K銀行) | 約109万円 | 約1,308万円 | +180万円/年 |
2.7億円を金利1.6%で借りる場合、30年と25年では、毎月15万円、年間180万円も返済負担が変わる。同じ物件・同じ金利でも、期間が違うだけでこれだけ手残りが変わる。
不動産融資への積極性が控えめ
もうひとつ、K銀行の重要な特徴がある。不動産への融資にあまり力を入れていないこと。これは直接聞いた話ではなく、打診してみて感じた肌感覚だ。
K銀行は明らかに、事業性融資全般を広く手がけていて、不動産投資家への融資を積極的に取りに行っているわけではない。C銀行が「借りてください」くらいのスタンスで前のめりに来るのに対し、K銀行は「まあ検討しますよ」くらいの温度感。
だから、K銀行はメインで使う銀行にはなりにくい。共同担保の当て先とか、一時的な借入先としてなら使えるが、拡大戦略の中心には置けない、というのが私の判断だ。
3社の比較まとめと、使い分けの戦略
3社の比較表
| 銀行 | 融資割合 | 金利 | 期間 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| C銀行 | 9割 | 中(1.6%) | 30年 | 収益還元重視・本命 |
| Y銀行 | 7割 | 低(-0.2〜-0.3%) | 30年 | 積算重視・郊外向け |
| K銀行 | 案件次第 | 中 | 25年 | 補助的位置づけ |
物件の特性で選ぶ
では、どう使い分ければいいのか。ひとつの考え方として、自分が買いたい物件の特性で選ぶのが基本だ。
自分の属性で選ぶ
もうひとつ、自分の属性で選ぶという視点もある。属性が高く融資額を最大化したいならC銀行。属性がそこそこで金利の低さを取りたいならY銀行。シンプルだ。
10年かけて学んだこと
私がこの10年で学んだ一番大事なことは、銀行には性格があり、自分と物件との相性で選ぶということだ。「とにかく大手地銀に持ち込めば借りられる」という発想では、遠回りになる。
物件と銀行、両方の性格を理解して、マッチする組み合わせを探す。これが拡大していく上での現実的な戦略である。