多くの人が勘違いしている「融資中心思考」

SNSで融資条件の話をすると、必ず「どうやって引いたんですか」「裏技を教えてください」という反応が来る。その時点で、質問している人は勘違いをしている。

多くの初心者が思い込んでいるのは、不動産投資は「融資をいかに引くかの勝負」だということ。もちろん融資は大事だ。しかし、その前提となるのは、自分自身にどれだけの自己資金があるか、ここなのだ。

POINT
銀行は、担保・返済能力・自己資金の3つで判断する。この中で最も見落とされがちなのが自己資金だ。

銀行が自己資金を重視する理由

銀行は、自己資金がしっかりある人を信用する。なぜなら、自己資金がある人は、節約して、コツコツ貯めてきた人だからだ。お金を管理できる人間にしか、銀行はお金を貸したくない。当たり前の話なのに、多くの人がこの本質を見落としている。

逆に言えば、自己資金を貯められない人は、そもそも不動産投資のスタートラインに立てない。この現実を、まず直視する必要がある。

不動産投資で一番重要な能力は、節約して貯める力

不動産投資を成功させる上で、一番重要な能力は何か。

それは、いい物件を見つける目でも、銀行と交渉する力でも、税金の知識でもない。節約して、自己資金を貯める力。これが全ての土台だ。

融資が付くのは、年収1000万円で金融資産ゼロの人ではなく、年収600万円でも金融資産2000万円を作った人のほうだ。

考えてみてほしい。年収1000万円あっても、全部使ってしまって金融資産がゼロの人。この人は銀行から見たら、信用できない人だ。収入があっても、それを管理できていないと判断される。

逆に、年収600万円でも、毎年200万円貯めて、10年で2000万円の金融資産を作った人。この人は、銀行から見たら信用できる人。両者を比べたとき、融資が付くのは後者のほうだ。

自己資金の具体的な目安

自己資金がまだ十分にないという人が、まずやるべきは物件探しではない。生活を見直して、自己資金を貯めること。これが最優先だ。

最初の1棟を買うための目安

最低でも物件価格の10〜20%の自己資金+諸費用+生活防衛資金。これは欲しい。

物件価格自己資金の目安諸費用の目安
3,000万円500〜700万円200〜300万円
5,000万円800〜1,000万円350〜450万円
1億円1,500〜2,000万円700〜900万円

これが用意できない人は、物件を買うより先に、貯める期間に集中するべきだ。焦って買って、数年後に後悔する投資家を、私は何人も見てきた。

銀行階段を一段ずつ登る

自己資金が一定量たまってきたら、次のステップ。よく聞かれるのが「どの銀行に行けばいいですか」という質問だ。

結論を言うと、最初から大手地銀や大手銀行に行く必要はない。というか、そもそも相手にしてもらえない。

POINT
不動産投資は、物件ありきで、自分の属性に合った金融機関との取引を探していくゲーム。物件が先、銀行は後だ。

信金 → 地銀 → 大手地銀の階段

自分の属性がまだ育っていない段階なら、最初に付き合うべきは信用金庫だ。信金は地域密着で、融資判断が柔軟な面がある。属性が完璧じゃなくても、物件が地元にあり、事業として成立していれば、融資を検討してくれる可能性がある。

私自身も、最初は信用金庫との取引から始めた。そこで実績を積み、返済を続け、金融資産を貯めていった。そうしているうちに、徐々に地方銀行との取引に広げることができるようになった。そしてさらに規模を拡大する中で、今は大手地銀から金利1.6%・9割融資・30年という条件を引けるようになった。

STEP 1:信用金庫で実績を作る
地域密着型の信金は、属性が完璧でなくても話を聞いてくれることが多い。ここで1棟目を買い、返済実績を積む。これが次の階段への登録証になる。
STEP 2:地方銀行との取引を開拓
信金での実績を持って、地銀に打診する。融資額・期間・金利すべての条件が一段階改善される。複数物件を持つなら地銀が軸になる。
STEP 3:大手地銀で9割融資を引く
属性と実績が一定ラインを超えると、大手地銀が「借りてください」と前のめりに来るようになる。ここまで10年。一朝一夕では辿り着けない。

いきなり大手地銀に行っても、実績のない人は相手にされない。まず信用金庫から始めて、そこで実績を作ること。これが現実的な戦略だ。

ノンバンク系の位置づけ

もうひとつ、よくある質問に答えておく。「ノンバンク系の銀行はどうですか」。

たしかに、ノンバンク系にはサラリーマン属性があれば、比較的融資を引きやすい銀行がある。不動産投資をやっている人なら、いくつか思い浮かぶはずだ。

長所と短所

これらは1棟目、2棟目を買うには便利だ。属性をそのまま使えば、融資が付きやすい。

WARNING
ただし、ノンバンク系は拡大には向かない。サラリーマン属性の枠を使い切ったら、それ以上は融資を伸ばしにくい。2〜3棟目で融資の限度にぶつかり、そこで止まってしまう人が多い。

もし本気で拡大していきたい、5棟・10棟と積み上げて資産を作りたいと考えているなら、やはり信用金庫・地方銀行・大手地銀という、事業性融資の本流ルートを通るべきだ。最初は時間がかかるが、将来の拡大余力が全く違う。

ノンバンク系は、入口としてはアリだが、出口を見据えて使うのが鉄則。ここを勘違いすると、早い段階で詰まる。

10年かけて学んだこと

私自身、10年かけてこの階段を登ってきた。一朝一夕ではできない。でも、一歩ずつ進めば、必ず景色は変わる。融資の条件は、交渉で決まるものではなく、自分自身の属性と実績で決まる。このシンプルな事実を受け入れることが、不動産投資の第一歩だ。